『構造人類学』(レヴィ=ストロース)所収 「象徴的効果」

「[シャーマニズムの]治療は、したがって、はじめは感情的な言葉で与えられる状況を思考可能なものにし、肉体が耐えることを拒む苦痛を、精神にとっては受け入れうるものとすることにある。シャーマンの神話が客観的現実に照応しないということは、たいしたことではない。患者はその神話を信じており、それを信ずる社会の一員である。」

それはつまり「生理過程の解放」、すなわち「患者がその進行に悩んでいた一連の過程の好ましい方向への再組織化」である。

  • 「シャーマンによる治療は、われわれの器官医学と精神分析のような心理療法との中道に位置している」
  • 「両者の場合とも、それまで無意識にとどまっていた葛藤と抵抗を意識に導こうとする」
  • 「両者とも経験を引き起こすことをめざし、両者とも患者によって生きられ、あるいはふたたび生きられるところの神話を再構成することによって、そのことに成功する」
  • 精神分析においては、医師が作業をおこない、患者がその神話をつくり出す。シャーマニズムの治療においては、医師が神話を提供し、患者は作業をなしとげるのである」

シャーマンは転移の対象ってか。

  • シャーマニズムのメカニズムは、神話の触媒作用のもとで、支配的な構造によって経験が再組織化されることである
  • 「無意識はわれわれがそれによって一つの機能を指し示す言葉になる。すなわちそれは象徴機能である」
  • 「神話の形式が、物語の内容に優先する」
  • 精神分析というこの、シャーマン術の現代的形式は、したがって、機械文明の中では、神話的時間のための場所が人間自身の内にしかないという事実から、その特殊な諸性格を得ている」

「特殊な諸性格」とはすなわち、上記の「象徴機能」(神話の形式=構造)は両者に共通しており、どこに起源(物語の内容)を求めるかが異なるということであろう。精神分析は個人内に、シャーマニズムは社会的神話の中に起源を求める。だがあくまでも「構造」は同一である。