問題の構図

 環境リスクに共通するキーワードは「人為性」。

1.自分たちや将来世代の健康が飲食物や大気に含まれる有害物質のためにじわじわと損なわれるのではないかという不安
2.原子力発電施設や化学プラントなどで大規模災害が発生し、一瞬にして取り返しのつかないカタストロフがやってくるのではないかという恐れ
3.自然開発や産業活動が生態系に悪影響を及ぼし、多くの生物種が存在を脅かされていることに対する懸念


◆毎年多くの犠牲者を出している大雨や台風、土砂崩れは解決すべきリスクとしてそれほど人々の意識にのぼっていない(Gen註;地震は例外では?つまりルーティーンから外れるリスクが重く見られるということでは?)
◆自然災害はあきらめられても人為的環境の不備は許し難い
◆生物の多様性についても、山火事や洪水ではなく、森林開発や工場、家庭からの排出物によって自然環境が破壊され動植物種が危機に直面するという「人為的な」状況に人々は心を痛める


つまり‥

 「環境問題とは人為的活動の悪影響に対するマネジメントの問題であり、別の言い方をすると科学技術の負の側面にどう対処すべきかという問題である。すなわち、われわれの社会がさまざまな科学技術をどのようなかたちで、どの程度まで導入するべきかが問題の中心である。被害サイドの観点からみると環境・健康リスク問題であり、同じことが加害サイドに焦点をあてると科学技術のリスク問題という構図になる」。


問題は‥

1.どの程度のベネフィットに対してどの程度のリスクを受け入れるべきなのか
2.その判断は誰が行うべきなのか


まず考えられるのは‥

1.意志決定の手続きについての透明性を確保することが必要(手続き的公正を経た上での合意形成)
2.リスクとベネフィットについて情報公開されていることが必要


しかし、

1.絶対的なリスク推定値を求めることは困難(リスク推定値はモデルによって大幅に異なる。基本的に、不確定ないま・現在において判断を下さねばならない)


2.金銭という一元的な尺度に乗せてベネフィットを求めリスクとのトレードオフを考慮するリスク・ベネフィット分析の結果は、複数の政策や技術の優劣を社会全体でトータルして比較検討する上で公正な方法ではあるが、個人にとっての多元的な価値が適切に市場価値として反映されるわけではない


3.したがって、科学的合理性のみならず、いわば「社会的合理性」を考慮したモデルが必要。リスク・ベネフィット分析の結果はあくまで判断材料のひとつ