『構造人類学』(レヴィ=ストロース)所収 「呪術師とその呪術」

  • シャーマンを構成する3つの要素
    • シャーマン自身の経験、患者の経験、公衆の経験
  • シャーマニズムのふたつの極
    • シャーマンの内的経験←→集団合意

シャーマニズムは、実は、異質で得体の知れないものを集団の物語の中に統合するパフォーマティヴな作業であることをストロースは指摘する。そこでは呪術の物語を巧みに創作することが求められる。シャーマン自身もやっていることが「インチキだ」と知っていてなおかつやっている面がある。だがしかし集団が望む物語を語りそれが集団にとっての真実となることで、「真実/非真実」の区別はシャーマンの中で消滅してゆく。たとえば日本では、家庭教師がこれに似た面を持っているのではないか。大多数の家庭教師は詐欺なのに、はじめこそ罪悪感はあれ、徐々に「教師」という主体を獲得してゆく。

  • 「ケサリード(人名)は病気を治したから大呪術師になったのではなく、大呪術師になったから病気を治したのだ」
  • 「正常な思考はつねに意味されるものの欠如に悩むのに対して、いわゆる病的な思考は、意味するのものの過多を利用する。シャーマンによる治療への集団の協働は、この相補的な二つの状況のあいだに調停を成立させるのである。」

得体の知れぬものに対して言葉を持たない患者。一方、病的(狂気的)なまでに過剰な言葉の源泉となるシャーマン。民衆(社会)の価値体系が両者を調停し、得体の知れぬものは社会および患者の物語に統合される。