読書録

 ダーウィン以後

ダーウィン死後は凋落の一途をたどった進化論。自然選択理論が支持されていたというよりも、 現象としての進化とその唯物論的・進歩的な解釈という「周辺部分」のみが、ドーナツのように残されることになった。かくして、19世紀末から20世紀にかけて、社会進…

 ダーウィン

1858年、リンネ学会で、同時期に同様の理論に思い至ったウォレスと共に発表。1859年、『種の起源』を出版。ちなみにダーウィン理論の大枠は1838年には決まっていたらしいが。

 ダーウィン以前

どうも○○学ってのがごっちゃになってしまうので、佐倉統さん流のまとめかたを叩き台にしてみるテスツ。 進化論の歴史的な変遷は、他のすべての科学と同様、キリスト教と密接な関係にあった。 18世紀の時代思想がまずあった。18世紀の西洋生物学とは、自然=…

 文化は各個人がもっているものなの?

久々に文化人類学らしく。素晴らしく豊かな、浜本満さんの論を自分で消化するための引用+少々考察エントリー。引用部以外は浜本さんの論ではなく、私の稚拙な考えなので誤解なきよう。 http://anthropology.soc.hit-u.ac.jp/~hamamoto/lecture/2004w/1.html…

 キッチュへの倫理的非難

ではキッチュへの倫理的非難はどのように成立しうるのだろうか。 キッチュが寄生の美学によってえたものを、あたかも自分に固有のものであるかのようにいつわって、みずからを「作品」として自分に売りつけるとき、たしかにそれは倫理的不誠実として非難され…

 「寄生の美学」としてのキッチュ

だが、芸術作品とキッチュは、それぞれ拠って立つ美学が異なっている。芸術作品は多くの場合なにかしらの強度をそれ自体に内包している。 芸術→それに固有の視覚的な美的構造を備える(自存性の美学) キッチュ→たとえばお正月の門松みたいな「際物」。それ…

 もうひとつの態度――「誠実」

キッチュはまた「誠実」という態度の問題でもある。ロマン主義においては、作品が芸術家の個性や精神の表現とされた。自己表現の美学は、自己表現の「誠実さ」を要求する。つまり、 情動過多のキッチュは、作者自身が感じてもいない見せかけの感情の表現 だ…

 キッチュとはセンチメントの過剰?「自制」という態度

たとえば19世紀、ヴィクトリア朝様式の過剰な室内装飾。あるいは現代でいえばラブホの過剰な装飾、悪趣味な喫茶店のシャンデリア、見栄っ張りな質屋育ちの娘が持参するどでかいダイアモンドの指輪、といったトコでしょうか。とにかくキッチュは「過剰さ」を…

 「キッチュ」の語源

昨日の続き。またもや基本的に『現代アートの哲学』に拠る。 キッチュの語源、ドイツ語、1860年頃、ミュンヘンにて。この時代は貴族・ブルジョワ社会から、産業・大衆社会への幕開けの時代。 一説によると、スケッチ(sketch)がキッチュの語源だという。ミ…

 批評という言説

そもそも範例的趣味とは、個人的な趣味とその鑑賞判断に関する「争論」をつうじてのコンセンサスという形で徐々に形成されて、一定の慣習や規範となり、伝統としての安定性を獲得したものである。逆に、個人的趣味の担い手である個々人にしても、‥つねに範例…

 芸術における「よき趣味」とは何であろうか

アートに対する趣味は得てして価値判断される。 大衆化に伴って衰退したもの、それはかつての西洋近代の文化を支えてきた教養主義であり、そのような趣味=教養の発露としての「芸術」概念である。逆にいえば、「よき趣味」と「悪趣味」が峻別されるようにな…

 近代美学の混乱の原因

これはなかなか鋭い指摘ではないだろうか。 近代は、芸術をそのような作品外の習慣のコンテクストから引き離して、その自立性を強調してきた。近代美学の混乱は、一方でそのような自立的な作品の純粋に美的・芸術的価値を強調しつつも、他方で、あいかわらず…

 「美的経験」の論理的根拠

外の神社で「福はう〜ち」とか連呼してるおっさん、うるせえ‥。アートを純粋に哲学されると引くのだが、面白いことは疑いえない。テスト対策兼。基本的に『現代アートの哲学』に依拠。 作品の美的経験は、その作品が生み出されたアートワールドの文脈や、そ…

 自分の社会的・組織内的位置そのものが自己アイデンティティを定位している

(p.190) 組織の社会的仕組み自体に、構成員に関する完全に包括的な考え方――すなわち単なる構成員としての彼に関する考え方ばかりではなく、その背後に人間存在としての彼に関する考え方――が、組み込まれているのだ。 (p.197) 私が関心を抱いているのは、組織…

刑務所の問題

ISBN:4414518032 社会一般的な期待>> 刑務所は受刑者が社会に対する自分の罪を償い・法を尊重する心を養い・自分の罪を内省し・正統な職業を身につけ・ときには必要な精神療法を受ける場を与えるもの

 落書き程度の村上春樹『アフターダーク』の感想

イブそれなりに楽しかったぞ。つーか風邪だし二日酔いだし頭いてー。去年の今頃は北海道にいたと思うと笑える。目が覚めたので、手元にあった、前買って放置してあった村上春樹『アフターダーク』読了。2時間かからず読めた。なんて読みやすい本なんだ。最後…

 自然淘汰と性淘汰

進化の「適応」を説明するふたつの側面、生存と繁殖。 生存→自然淘汰 繁殖→性淘汰 これまで性淘汰の観点からの説明がなおざりにされてきた。しかし「心」は、性淘汰から説明した方がうまくいく。

 夏休みの読書予定

みなさんはもう立てたでしょうか。って普通は立てないか。自分の場合、大甘だから、立てなければやってられないという罠。とにかく今年の夏は、もう花火も満喫したし、読書に捧げる。 ここはひとつ、進化論・科学論が専門の佐倉統先生(http://park.itc.u-to…

 ネットワーク論学習メモ

新ネットワーク思考―世界のしくみを読み解くアルバート・ラズロ・バラバシ , 青木 薫 還元主義の困難さ=分解したものを再び組み合わせる困難さ 自己組織化という法則、複雑性の壁 18世紀後半:レオンハルト・オイラー「ケーニヒスベルクの橋」問題 20世紀…

 理念型

彼の求めるのは、かかる概念を使用する場合にはいつも、理念的な思惟上の構成物であるという、その性格が、入念に保持され、[研究者が構成する]理念型と[対象の]歴史事実とが混同されないことだけであろう。 これは実際にはかなりナイーブな問題でもあること…

 現実から乖離する理論

諸概念は彼には目標ではなく、個別的な観点からで意義ある諸連関を認識するという目的のための手段なのである。 これは本当に重要な点だと感じる。ある命題は自らが属する理論体系内での整合性を保とうとして、不自然に現実から乖離したものとなる傾向が多々…

 M.ウェーバー「社会科学的および社会政策的認識の「客観性」」より、自分のための写筆メモ。

史的研究上の概念とは、「本来何なのか」「真実とは何なのか」と、その意味を突き止めようとする試みは、絶えず繰り返されるが、しかしその試みには、これで良しという終わりは決してない。したがって、全く正常なことなのだが、それらを使って歴史学が絶え…

 M.ウェーバー「社会科学的および社会政策的認識の「客観性」」より。

ウェーバーの言う「理念型」。彼はある理論が個別的にしか成り立ち得ない(普遍としては存在し得ない)ことを指摘する。だが同時に彼は、個別性の認識は普遍性を追求しなければ立ち現れてこないこと、個別的(相対的)、だからこそ普遍を問う必要があること…

 「開発人類学再考」玉置泰明(『文化人類学のフロンティア』所収)

潜在能力(capability)とは、ある人が選択できる一連の代替的な機能(functioning)の集合と定義される。機能は人びとがもっている能力が発揮された状態を指す。そして貧困とは基礎的潜在能力の剥奪(状態)であり、潜在能力の拡大こそが開発(ないし公共政…

 前掲書より 都市社会学と都市人類学の違い

さあ、最もアツい箇所がこちら。 都市人類学は、都市の全体性を鳥瞰的に示すのではなく、どこか考察のプロセスであるいはその分析方向が指し示す延長線上で、都市の全体性の「断面」を示してその全体性を「示唆し」ながら、逆にきわめて繊細で微的な都市住民…

 「都市に生きる人のための都市人類学」和崎春日(『文化人類学のフロンティア』所収)

あまり強調されてこなかったが、文化人類学のなかで都市人類学が登場したそのときから、全体的に自己完結する閉じられた民族誌を超えた、「開かれたシステム」「自己完結しない系」と取り組む「開かれた民族誌」が目指されたといえる。(p.66) フローとして…

 「神話の構造」、『構造人類学』(レヴィ=ストロース著)所収

構造主義のいう<構造>とはすなわち、一見混沌に見えるものの中から二項対立(対立関係)をたくさん発見し*1、そのたくさんの二項対立を徐々により大きな単位の二項対立でまとめ上げてゆく作業により発見されるものであろう。徐々に有限個の対立関係に置き…

 Dominance, aggression and testosterone in wild chimpanzees: a test of the ‘challenge hypothesis’ (Animal Behaviour,Volume 67, Issue 1 , January 2004, Pages 113-123 )

フェロモン系化学物質として知られる(?)、テストステロンに関するお話。趣旨は、「テストステロンは従来いわれてきたように生殖行為(セックス)に密接に絡むというよりは、広い生殖の文脈での攻撃性にこそ関連しているのではないか」というもの。 セック…

 Saya S.Shiraishi, "Japan's Soft Power: Doraemon Goes Overseas," Network Power: Japan and Asia, Cornell University Press, 1997

参考:http://www.center.isics.u-tokyo.ac.jp/new/news15/15-1.html 日本マンガ文化の基盤は雑誌 連載形式=書きながら同時にリサーチできる(綴じ込みはがき) リスクを削減できる=冒険的作品/実験的試みが可能 単行本化 人的コストをかけず利益を生み出…

 「真正さの水準」

参考:『レヴィ=ストロース入門』(小田亮)、『構造人類学』(ストロース)所収の「社会科学における人類学の位置および人類学の教育が喚起する諸問題」 真正な社会の様式 身体的な相互性を含む<顔>のみえる関係における多元的なコミュニケーション 全体…