正統的周辺参加論のメリット

「従弟制という言葉が暗示するように、そこには親方あるいはそれに相当する存在がいて、彼をとりまくように、熟練の諸レベルの階層的、同心円的な構造が存在する。こうモデル化することの利点は、社会構造の再生産と、個人の認知的熟達化という心理的側面が、ここで統合されるという点にある」

心理的熟達化の段階は、ここでは実践の共同体内でのゆるやかな向心円的運動として描くことができる。そしてそれぞれの段階での熟達の習得の差は、まさにその共同体内での、物理的、社会的位置づけの差としてこれを措定することができるのだ」

「実践というものが、緩やかに変化する環境(それは実践共同体内での地位変化に対応するが)の中での、継続的な学習の過程であるという重要な帰結がここで得られることになる。ブルデュー流にいえば、暗黙のうちに学習する能力を持つ社会的身体が、この緩やかな螺旋運動の中で、その親方に具体的に代表されている認知・判断・行為のマトリクスを、その共同体に参加するという行為によって、自然と身体化していくということなのである」

それゆえ、ブルデューにおいて抽象的にハビトゥスと語られてきたものは、ここでは「熟達のアイデンティティ」と呼ばれている。