社会的行為者(agent)を導入すると何が得られるのか

「心的構造の代わりに社会的行為者というものを分析の中心におき、彼らの実践的な活動というものを軸に分析してみると、心的構造という発想を支える暗黙の前提を、いわば再文脈化することが可能になる」
「われわれの様々な社会的実践は、極端に規制されたレベルから、そうした制限がかなり弱いレベルまで、一連の緩やかな分布をみせている。規制の最もキツイ側面は、儀礼が典型である」
「現代産業社会では、ゴフマンが強調するように、社会の全体的な世俗化によって、こうした儀礼的秩序は比較的マイナーな領域に押し込められたが、それでもその片鱗はさまざまな現代版の儀礼や挨拶行為等に見ることができる」

「むしろ近代的諸制度は、そうした儀礼的拘束の部分的撤退を補完する意味で発達してきたものと見るべきであり、共同体中心の儀礼的規則の代わりに、個別の身体をターゲットとして大量に監視・訓練するシステムなどが発達してきたという議論もある(→フーコー『監獄の誕生』)