勝手に淡々とレジュメ化するよその2

Culture, Cognition, and Evolution(Dan Sperber and Lawrence Hirschfeld)
http://www.dan.sperber.com/mitecs.htm

スペルベル男爵。http://d.hatena.ne.jp/Gen/20050420の続き。さしあたって「文化」を定義して欲しいYo!>男爵


¶20
ここから、【2.進化的あるいは認知的パースペクティブの中の、文化】の話。
◆社会的動物はたくさんいるが、そのうちいくつかの種は、世代を超えて伝達される情報を、行動を通じて共有/維持する。
◆たとえrudimentary(初歩的)でも、それらの動物は「文化」をもつと言えるだろう。
◆考古学(archaeology)的には、人間の単純な文化はおよそ200万年前から、複雑な文化はおよそ4万年前から存在したと考えられる。
◆「複雑な文化」とは、"cultural symbolism"(儀礼やアートなど)を含むもの。


¶21
◆「文化」の研究は、認知科学と関連性を持つ。
◆なぜなら、
a.文化の存在は、人間の認知能力の効果であり、それが顕在化したものであるから(effects and manifestation)。
b.今日の人間社会は、人間の生活――とくに認知的活動――のあらゆる側面を、文化的にフレーム化するから。
◆人間の認知は、社会的・文化的コンテクストの中で生じる。すなわち、文化から与えられたツールを用いる。「文化から与えられたツール」とは、たとえば言語・概念・信念・本・顕微鏡・コンピュータといったもの。
◆さらに、認知活動の大部分は、社会的・文化的事象に関するもの。


¶22
◆したがって、文化に対する認知的パースペクティブと、認知に対する文化的パースペクティブは、両方必要でありcomplementary。


¶23
◆文化的多様性の問題について。
◆20世紀初頭まで、文化的多様性は生物学的多様性に結びつけられていた。(進歩"progress"観念との結びつき)
◆Adolf Bastian & Edward Tylor→人間の"psychic unity"を主張。(Gen註:cf.「文化または文明とは、知識、信仰、芸術、道徳、法律、慣習その他、社会の成員としての人間によって獲得されたあらゆる能力や習性の複合的総体である」)
◆Franz Boaz→人間の文化的多様性は"learned"だと主張。
◆今日、文化的多様性イコール生物学的多様性とは考えられていない。
◆文化的多様性は、共通の生物学的能力――特に認知的能力――の効果("effect")であり、異なる歴史的/生態学的条件を与えられれば、この多様性が可能になると考えられる。

¶25
◆では、認知能力と文化は具体的にどのように関わるのか。
◆文化的適応は認知的適応に勝る(trump)が、これは、文化的スキルと人工物が、人間の認知構造からは予想できない結果の達成を可能にするという意味において、である。


¶26
◆多くの社会科学者は、この点から、心理学は社会科学や文化研究に無関係だと考えてきた。
◆しかし、比較的同質的な genaral-purpose intelligence を想定し、なおかつ、それに文化的多様性形成における役割を与えることは、可能なのである。
マリノフスキー:宗教や信念そして文化を、心理的欲求の観点から説明しようとした。
レヴィ=ストロース:人間の無意識的構造から文化を説明しようとした。( hierarchical classification や 二項対立への preferences が、親族関係や神話といった複雑な社会文化システム形成において重要な役割を果たすことを明らかにしようとした)


¶27
認知人類学 (reviewed in D'Andrada, 1995)
認知人類学では、人間の心が、"same categorization and inference procedure"を、すべての認知領域に適用すると仮定される。
◆早期の研究は、分類体系へ注目し、認知科学よりもsemanticsやsemioticsから概念的道具を引っ張り出した。
◆最近、Shank and Abelsonが"scripts"というアイデアを出した。
→より大きな知識の構造――"cultural schema"や"cultural models"――が行動や信念をguideするという考え方。
◆これらの研究はメタファー研究に受け継がれた。(Lakoff & Johnson,1980; Lakoff,1987)


¶28
◆Quinn(1987)は、結婚に対する一連の結合したメタファーが、他の日常的領域へのmodelsに由来する諸前提を、内に含むと考えた。(ex.folk psychology)
◆Schema的分析は、心的表象と文化的表象を橋渡しすることを意図している。


¶29
◆社会科学者の文化重視の姿勢と、近年研究が進んでいる、心の(生物学的)複雑さについての知見は、調停可能である。
◆たとえば、"genaral intelligence"への批判――心のモジュール仮説、"domain specificity")について。


¶31
◆二つに分けて考えられる。
A.最も重要な領域特定的(domain-specific)な能力
→これは進化的適応であり、どの文化でも働いている(それぞれ「効果」は異なるが)
B.社会的文化的に発達した領域特定的(domain-specific)な能力
→たとえば専門性(expertise)など。これはそれぞれの文化に特有。
◆AとBの関係は、きわめて興味深い研究対象である。たとえば、どれくらいBはAに根ざしているのか。
◆cf. Folder,1982


¶33
◆近年の研究
→入出力過程だけではなく、中央の概念メカニズムもどうやら領域特定的である。
たとえば、人間の行動を「信念」「欲求」の観点から解釈しようとする"theory of mind"。その他、"folk biology"や"naive physics"。
◆これらは、子どもが複雑な事象について(一貫性を保ちながら)考える際に、基礎を与える。